第568章 13年間愛してた(38)

寝室から馬場萌子の声が消え、異常な静けさが漂っていた。

鈴木和香は落ち着いてソファに座り、時折iPadの画面をスクロールしていた。来栖季雄という人物は、性格が冷淡で人との接触を好まない以外は、特に悪い点はないようだった。そのため、ネット上で暴露されているのは、主に彼の母親についてのスキャンダルだった。古い新聞から撮影された記事には、彼の母親が何人もの男性と関係を持っていたことや、クラブで男性客に囲まれて酒を飲んでいる写真が掲載されていた。さらには、アダルトビデオの映像まで出回り、無数の人々が拡散し、母親の誇張された表情をスタンプにしたりしていた。トピックに上がっている噂や言い回しは、目を覆いたくなるようなものばかりだった。来栖季雄のファンは強力で、「何があっても私たちのアイドル」「私たちは支持します」といった前向きな言葉を投稿し続けていたが、それらの言葉も、傷つける言葉の前では空しく響くだけだった。

彼が椎名家の隠し子であることは知っていたが、彼の母親が誰なのか、そしてこのような知られざる背景があることは全く知らなかった。

鈴木和香は椎名家で赤嶺絹代を見舞った時のことを思い出した。彼らが来栖季雄と彼の母親を軽蔑するような言葉を口にしていた時、彼女はとても辛かった。今、ネット上でこれほど多くの人々が彼の母親を中傷している中で、彼はどれほど苦しんでいるだろうか?

鈴木和香は今の来栖季雄のことを考えると、おそらく他人の知らない場所に一人で隠れ、この痛みを一人で抱えているのだろうと思うと、まるで誰かに刃物で刺されたかのような痛みを感じた。我慢できずに固定電話を取り、再び来栖季雄に電話をかけたが、やはり通じなかった。

鈴木和香は以前電話帳をあるアプリに保存していたことを思い出し、急いでiPadにそのアプリをダウンロードし、来栖季雄のアシスタントの電話番号を探して電話をかけたが、電源が切れていた。以前桜花苑に住んでいたので、桜花苑の電話番号も持っていたが、かけても誰も出なかった。

鈴木和香は他の電話番号にかけようとしたが、iPadの時刻を見ると午前3時半を指していた。深夜なので、みんな寝ているだろう。