第594章 私の愛する人、久しぶり(4)

鈴木和香は椎名佳樹の隣に座って少しの間過ごし、階段を見上げてから立ち上がり、近くの給水機まで歩いて行って、コップ一杯の水を汲んで、ソファの前に戻り、「佳樹兄」と呼びかけた。

椎名佳樹は反応せず、まばたきひとつせずに視線を固定したままだった。

「佳樹兄?」和香がもう一度声をかけ、手を上げて椎名佳樹の肩を軽くたたいた。

椎名佳樹は突然我に返り、テレビ画面に映った松本雫の姿を見て、自分が無意識のうちにこんなにも長い間ぼんやりしていたことに気づいた。

あの時、大泉撮影所で怒りに任せて去って以来、彼と彼女はほとんど接触がなかった。その後、椎名グループが経営危機に陥り、彼は椎名家の御曹司から一部門のマネージャーへと転落し、地位は大きく変わってしまった。そのため、彼も彼女を探しに行くことはなかった。