第505章 嫁げないなら、僕が娶ろう(5)

学生時代、来栖季雄が優等生だったとすれば、鈴木和香は落ちこぼれの部類に属していたに違いない。落ちこぼれながらも人並み以上の努力で1組に入り、A大学にも合格したのだが。

店主は来栖季雄に陶芸の作り方を一度教えただけで、彼はとても流暢に作れるようになった。一方、鈴木和香には何度も教えたのに、彼女は手順を時々忘れてしまう。

新しいお客さんが来たので、店主は他のお客さんの対応に行き、来栖季雄と鈴木和香は自由にカップを作って楽しむことになった。

陽光が依水園を暖かく照らし、木造の建物の外では静かな水が流れ、様々な表情の人々が湿った石畳の上を歩いていく。時は静かに流れ、来栖季雄の作った陶器も静けさに満ちていたが、鈴木和香のは惨憺たるものだった。

最後に店主が二人の作品を見に来た時、鈴木和香は恥ずかしがることなく来栖季雄の作ったカップを手に取り、店主に向かって顔を赤らめることもなく、得意げに言った。「どうですか?私、すごいでしょう?」

店主は一目で、鈴木和香が手にしているのが来栖季雄の作品だとわかったが、指摘はしなかった。店主が鈴木和香の気持ちに合わせて褒める言葉を発する前に、隣に座っていた来栖季雄が寛容な表情で、心にもない言葉を誠実そうに言った。「すごいね」

鈴木和香の表情は途端に嬉しそうになり、さらに図々しく首を傾げて、自分が来栖季雄の手に押し付けた歪んでいびつな自作のカップを見つめ、目を大きく見開いて、驚いたような表情で言った。「来栖季雄、教えて!どうやったらそんなに醜いカップが作れるの!」

そして鈴木和香はさらに言った。「早く片付けて!外に出しておくなんて恥ずかしい!」

来栖季雄は優しく笑い、いつもの冷たく無関心な表情に、かすかな優しさが滲んでいた。本当にその醜いカップを丁寧に箱に入れて、しまい込んだ。

鎌倉に着いてから、鈴木和香と来栖季雄は蘭座劇場で道成寺の公演を観た。呉音の柔らかな言葉で、ゆったりとした調子。一言も理解できなかったが、メロディーは耳に心地よく響いた。その後は食べ歩きで、美齢粥や鴨血春雨などを楽しみ...約二日間滞在した後、来栖季雄と鈴木和香は午後の便で東京に戻った。