第588章 知られざる事(18)

鈴木夏美は携帯電話をぎゅっと握りしめ、少し躊躇してから尋ねた。「和香、気分が悪いの?」

鈴木和香は夏美のその言葉に少し戸惑った。「ううん、別に」

「そう」夏美は和香の声に変わった様子がないのを聞いて、自分が敏感になりすぎたのかと思い、少し笑って言った。「じゃあいいの。私これから会議があるから、切るね」

「うん、お姉ちゃん、またね」

「じゃあね」夏美は電話を切る時、指が少し止まって、呼びかけた。「和香」

「うん?」

夏美は和香に全てを打ち明けたかったが、どう言い出せばいいのか分からなかった。しばらく迷った末、唾を飲み込んで、何でもないかのように明るく注意を促した。「和香、明日の夜8時よ、忘れないでね」

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鈴木和香は来栖季雄が去った後、『傾城の恋』の出演料で街中にマンションを一室購入した。広くはなかったが、一人暮らしには十分だった。