秘書の力が強すぎて、来栖季雄の体が揺れ、スマートフォンで入力中の指が震え、鈴木和香から送られてきた音声メッセージを誤ってタップしてしまった。
すると、静かな会議室に、鈴木和香の柔らかく温かい声が響いた。「日本の歌声の再放送を見てるの。」
鈴木和香の声の向こうから、大野のスムーズな声も聞こえてきた。「日本の歌声、本物の涼茶。」
会議室全体が一瞬にして静まり返った。来栖社長が会議中に女性とチャットをしているなんて、しかもその女性の声がどこか聞き覚えがある……
誰も声に出して議論する勇気はなかったが、明らかに視線で会話を交わし始めていた。
来栖季雄がまぶたを上げ、秘書を一瞥すると、秘書は手で顔を隠した。
全員が来栖季雄が恥ずかしさのあまり怒り出し、秘書を叱りつけると思った時、来栖季雄は視線を戻し、再びスマートフォンでの入力を続けた。