第573章 知られざる事(3)

昨夜病院から逃げ出してから今まで、鈴木和香はほとんど休むことも食事を取ることもできていなかった。重傷を負っていた彼女は体力が尽き、今や顔色は蒼白で、全身から冷や汗が止まらなかった。鈴木和香はゆっくりと別荘の玄関前の階段に腰を下ろし、膝を抱えて頭を埋め、呼吸は少し乱れていた。

秋に入った日差しは、夏のような強さはないものの、長時間浴びていると蒸し暑く感じられた。

鈴木和香の肌は白く繊細で、しばらくすると日に当たった部分が薄紅色に染まっていった。立ち上がろうとしたが、足の力が入らず、意志はあっても体が言うことを聞かなかった。

鈴木和香は階段に静かに座り込んだまま、目を閉じて呼吸を整えていた。長い時間が過ぎ、ようやく呼吸が落ち着いた頃には、太陽は西に傾いていた。

鈴木和香は片手で階段を支えながら立ち上がり、ゆっくりと階段を降り、来栖季雄の別荘から出た。