第575章 知られざる事(5)

「麗景楼」の料理は素早く運ばれてきた。上品な食器に盛られた淡白な料理は、食欲をそそる見た目だった。

アシスタントは紙袋から箸を取り出し、鈴木和香に手渡した。「これは全部あなたの好きな料理ですよ。食べ終わってから話しましょう」

鈴木和香は箸を受け取らず、唇を動かして何か言いかけたが、アシスタントが先に彼女の質問を代弁した。「きっと、私がなぜあなたの好きな料理を知っているのか気になっているでしょう?」

鈴木和香は口角をわずかに動かし、言おうとした言葉を飲み込んだ。

「来栖社長から聞いたんです」アシスタントは軽く笑い、グラスを手に取ってもう一口飲んでから、鈴木和香の方を向いて言った。「まずは食事をしましょう。食べ終わってから話します」

そう言いながら、アシスタントは箸を取り、自ら食べ始めた。