第607章 私の愛する人、久しぶり(17)

二台の車が前後して東京都に入ったとき、三環の立体交差点を通過する際、来栖季雄は鈴木和香に反応する時間を全く与えずに、突然スピードを上げた。鈴木和香がカーブを曲がって追いかけてきたとき、前方の三つの分岐点は空っぽで、来栖季雄の車の姿は既に見えなくなっていた。

鈴木和香は車のスピードをゆっくりと落とし、路肩に停車した。彼女は前方の三つの道路を茫然と見つめ、どの道を選ぶべきか分からなかった。

結局、彼を見失ってしまった……

鈴木和香は車の中で長い間座っていた後、携帯を取り出して時間を確認すると、既に深夜十二時を過ぎており、新年が始まっていた。彼女はまず奥様の世話をしている中年女性に電話をかけ、今から車を返しに行っても大丈夫かどうか尋ねた。中年女性は翌日返却すれば良いと言った。

鈴木和香は電話を切り、憂鬱な気分で自分が購入したマンションへと車を走らせた。

自分の巣に戻ると、疲れた様子でソファに座り、やっと足の裏から伝わる刺すような痛みを感じた。

彼女は下を向き、靴下に点々と血痕が付いているのを見て、少し悔しそうに口を尖らせた。そして慎重に靴下を脱ぐと、足の裏に擦れて出血した傷が複数あるのが見えた。真っ白な肌の上に、特に目立っていた。

鈴木和香は手近なテーブルの下から使い捨てアルコール綿の箱を取り出し、包装を破って傷口を簡単に消毒した。痛みで、彼女の眉間が時々軽く寄った。

消毒が終わると、鈴木和香はまるで全ての力が抜けたかのように、クッションを抱えたままソファに倒れ込んだ。

やっと来栖季雄を見つけたのに、彼は彼女に構う気配が全くなかった。

以前は、彼との再会の日が、彼らの幸せの始まりだと思っていた。今になって考えると、自分が単純すぎたようだ。

実際、彼が怒っていても、冷淡でも、彼女には理解できた。

あの時、彼は喜び一杯で彼女を一晩中待っていた。その夜は、彼にとって、きっと何度も何度も苦しみと責め苦だったに違いない。

だから今、彼が彼女をどう扱おうと、今回は引き下がらないし、諦めもしない。

鈴木和香はそう考えると、顔を向けて、テーブルの上に置かれたマールボロの箱と一枚の紙を見つけ、手を伸ばして取った。何かを決意したかのように、眼差しが少し強くなった。

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