第608章 私の愛する人、久しぶり(18)

お婆さんは子供のようで、常に人に構ってもらう必要があった。鈴木和香は少しも苛立つことなく、お婆さんの気持ちに寄り添って会話を続けた。そうして彼女は、お婆さんの口から来栖季雄についての多くの話を聞くことができた。

来栖季雄が現れたあの日の午後、お婆さんは繰り返し来栖季雄の幼い頃の話をしていた。彼らが以前住んでいた団地では、来栖季雄の母親がナイトクラブで働いていることを皆が知っていた。誰もがそういう女性を心の中で軽蔑していた。その上、来栖季雄の母親は美人だったので、団地の多くの男性が彼女を見かけるたびに目で追っていた。それが家庭の女性たちの不満を買い、やがて団地の女性たちは集まっては来栖季雄の母親を妖婦と罵り、自分の子供たちにも来栖季雄に近づかないように言いつけていた。