第609章 私の愛する人、久しぶり（19）

来栖季雄がそう尋ねた直後、自分が余計なことを言ったと気づいたようで、鈴木和香が口を開く前に、すぐさま言い放った。「あなたは必要ありません。帰ってください」

彼の言葉は、あまりにも直接的で人を傷つけるもので、鈴木和香の顔色が青ざめていった。

家政婦は急いで鈴木和香をフォローした。「来栖社長、鈴木君は奥様のお見舞いに来たんです。大晦日の夜に奥様が社長を探して迷子になって、鈴木君が奥様を送り届けてくださったんです…」

来栖季雄は家政婦の言葉にまったく興味を示さず、彼女の話が終わるのも待たずに、断固とした口調で遮って言った。「お客様をお送りしてください」

来栖季雄の客を送り出したい意図があまりにも明白で、彼女と一秒でも長く一緒にいることが耐え難いことのように見えた。鈴木和香は恥ずかしさで頭を下げ、手が落ち着かない様子でスカートの裾をいじった。

「来栖社長…」家政婦はまだ鈴木和香のために何か言おうとしたが、来栖季雄はまったく聞く気がなく、寝室へと歩み寄った。

鈴木和香の傍を通り過ぎる時、彼女は彼の名を呼んだ。「来栖季雄」

来栖季雄の足取りが一瞬躊躇したものの、立ち止まることなく彼女の傍を通り過ぎ、寝室に入った。そして、ドアを閉める際に家政婦を見て、再び声を上げた。「何をぼんやりしているんですか？早く鈴木君を送り出してください」

鈴木君…和香は初めて、この三文字がこれほど耳障りだと感じ、体が震えた。

彼女は思わず振り返って来栖季雄を見たが、彼は彼女を空気のように扱い、そのままドアを閉めた。

室内の雰囲気は気まずいものとなった。

家政婦は最初に鈴木和香に申し訳なさそうに微笑みかけ、その後、彼女の面子を保つかのように言った。「鈴木君、気になさらないでください。来栖社長はこういう性格なんです」

鈴木和香は目を伏せ、小声で言った。「大丈夫です」

その後、鈴木和香は家政婦が困るのを避けるため、顔を上げて家政婦に微かな笑みを向けた。「私、もう行きます」

家政婦は鈴木和香を玄関まで送り、途中で何度も申し訳なさそうに「すみません」と言った。

家政婦は鈴木和香がエレベーターに乗り込むのを見届けてから、ドアを閉めた。彼女は来栖季雄が買ってきた物を整理し、水を一杯注いで寝室へ向かった。まずドアをノックしてから開けた。