第633章 入籍(3)

昨夜起きたことが、早送りの映画のシーンのように、彼女の脳裏で一コマ一コマと過ぎ去っていった。その後、鈴木和香は寝室を見回してみると、来栖季雄の姿が全く見当たらなかった。本能的に来栖季雄が逃げたと思い込み、「ばっ」とベッドから飛び降り、自分が全裸であることにも気付かないまま、さっと寝室を飛び出した。

リビングの窓際に立っていた来栖季雄は、背後でドアが開く音を聞き、無意識に振り向いた。鈴木和香の裸体を目にした彼は、まず眉間にしわを寄せ、すぐに背を向けて、硬い声で言った。「服を着てから出てきなさい。」

来栖季雄にそう言われて、鈴木和香はようやく自分が何も着ていないことに気付き、顔が一瞬で真っ赤になり、急いで寝室に戻って、耳をつんざくような音を立ててドアを閉めた。

鈴木和香はシャワーを浴び、バスローブを纏って出てくると、ベッドの脇にタグの付いたままの新品の服一式が丁寧に置かれているのを見つけた。