ロビーには職員が応対しており、結婚手続きか離婚手続きかを尋ねてから、二枚の用紙を渡した。
鈴木和香は来栖季雄の手を引いてサービスカウンターの前に座り、迷うことなくペンを取って書類を記入し始めた。自分の分を書き終えてから、隣の来栖季雄がまだペンすら手に取っていないことに気づいた。
鈴木和香は急いで自分のペンを来栖季雄の前に差し出した。彼が受け取る様子がないのを見て、彼の手に無理やり押し付け、焦りながら催促した。「早く書類を書いてよ。」
来栖季雄はまず鈴木和香を一瞥してから、彼女が隙間なく記入した書類に目を落とし、少し呆然としていた。
なるほど、彼女は本当に自分と結婚したいのか...それは、彼女が本当に自分のことを好きだということを証明しているのだろうか?
来栖季雄の呆然とした様子に、鈴木和香の心は落ち着かなくなった。彼女は目をくるくると回し、来栖季雄の手からペンを奪い、彼の前にある申請書を取り上げた。「来栖季雄」という三文字を書き始めたところで、傍らにいた職員が親切に注意した。「申し訳ありませんが、お嬢様、結婚申請書は本人が記入する必要があります。」