第641章 入籍（11）

男が女性に与えられる最高の約束は結婚であり、同様に女性が男性に与えられる最も深い信頼も結婚である。

結婚は誰にとっても、この世界で最も貴重なものだろう。

そして彼女は結婚を通じて、彼のことが好きだと伝えようとしている。

彼女が一生を彼に捧げようとしているのなら、彼も今一度火の中でも水の中でも飛び込もうと思う。

そう考えると、来栖季雄の目の奥に、自嘲的な悲しみが浮かんだ。

結局、彼は彼女に負けてしまったのだ。

彼女は何度も彼の限界に触れ、彼は何度も彼女のために底線を譲り続けた。

でも、誰を責められるというのか？

この一生、彼女以外の誰も愛することができないのだから。

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飛行機が成田国際空港に着陸したのは、ちょうど午後3時だった。

冬の東京は風が強く、太陽が異常に明るく輝いているにもかかわらず、寒さで震えるほどだった。

来栖季雄は出発前にタクシーで空港に来たため、ここには車がなく、二人はタクシーを待つ列に並んだ。

乗車するとすぐに、タクシー運転手は「どちらまでですか？」と尋ねた。

来栖季雄は考えもせずに淡々と「区役所です」と言った。

「はい、承知しました」タクシー運転手は生粋の東京人らしく、典型的な東京弁で答えると、車を発進させた。

少し走ったところで、来栖季雄の隣に座っていた鈴木和香が「運転手さん、メイプル団地までお願いします」と声を上げた。

「えっ？区役所じゃないんですか？」運転手は困惑して聞き返した。

来栖季雄の表情が一瞬で暗くなった。

鈴木和香は急いで説明した。「住民票を持っていないんです」

来栖季雄の表情が少し和らぎ、鈴木和香には目もくれず、運転手に向かって「彼女の言う通りに」と一言だけ投げた。

まだ元宵節前で、東京の人出は少なく、道も混んでいなかったため、わずか30分ほどでメイプル団地に到着した。

来栖季雄は料金を支払い、二人はエレベーターで鈴木和香が購入したマンションまで上がった。

鈴木和香は鍵を開けると、靴も脱がずに寝室へ駆け込んだ。