第647章 入籍(17)

台本を読んでいた鈴木和香は、馬場萌子のこの質問に一瞬ぼんやりしてしまった。

実際、彼女も来栖季雄との結婚生活がどのようなものか説明できなかった。来栖季雄が帰国してからずっと、環映メディアには出勤していないものの、彼女が撮影をしている間も、彼は暇そうではなかった。具体的に何をしていたのかは、彼は彼女に話さなかったし、彼女も知らなかった。

来栖季雄は彼女に優しく、結婚後も夜遅くまで帰らないということはなかった。先日、馬場萌子が用事があって車を借りて行き、撮影現場に迎えに来た時に渋滞に巻き込まれ、彼女を長く待たせてしまった。冬だったので、風に当たりすぎて冷えてしまい、夜中に少し熱を出してしまった。来栖季雄はわざわざ外に出て薬を買ってきてくれた。それ以来、撮影現場への送り迎えは彼がするようになった。

だから振り返ってみると、来栖季雄は夫として非の打ち所がなかった。あえて一つ挙げるとすれば、結婚後のこの十数日間、毎晩同じベッドで寝ているのに、彼は一度も彼女に触れなかったことだ。

彼女が切実にそういうことを求めているわけではないが、結婚直後の二日間触れなかったのは、アメリカでの夜があまりにも激しすぎて、今は体を休めているのだと自分に言い聞かせることができた。しかし、これほど多くの日が続くと、どんなに楽観的に考えても、来栖季雄と自分の間に大きな問題があることは分かっていた。

鈴木和香はそこまで考えると、心の中でイライラが募ってきた。

台本を閉じ、窓の外の白く霞んだ空を見つめながら、眉間のしわがより深くなった。

結婚後は徐々に関係が良くなっていくと思っていたが、今の状況を見る限り、そうではないようだった。何か状況を改善する方法を考えなければならないが、一体どんな方法が効果的なのか、誰か教えてくれないだろうか?

「和香、何ぼーっとしてるの?話しかけても全然反応しないじゃない。撮影始まるわよ、早く!」隣に座っていた馬場萌子が、思わず手を伸ばして鈴木和香の肩を叩いた。

鈴木和香は体を震わせて我に返り、まず「あっ」と声を上げ、それから急いで立ち上がって撮影現場へ向かった。

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鈴木和香のシーンの撮影が終わり、撮影クルー全体が休憩に入った。

時刻は既に午後4時で、残っているのは4時半からの最後のシーン、鈴木和香と林夏音の対面シーンだけだった。