第647章 入籍(17)

台本を読んでいた鈴木和香は、馬場萌子のこの質問に一瞬ぼんやりしてしまった。

実際、彼女も来栖季雄との結婚生活がどのようなものか説明できなかった。来栖季雄が帰国してからずっと、環映メディアには出勤していないものの、彼女が撮影をしている間も、彼は暇そうではなかった。具体的に何をしていたのかは、彼は彼女に話さなかったし、彼女も知らなかった。

来栖季雄は彼女に優しく、結婚後も夜遅くまで帰らないということはなかった。先日、馬場萌子が用事があって車を借りて行き、撮影現場に迎えに来た時に渋滞に巻き込まれ、彼女を長く待たせてしまった。冬だったので、風に当たりすぎて冷えてしまい、夜中に少し熱を出してしまった。来栖季雄はわざわざ外に出て薬を買ってきてくれた。それ以来、撮影現場への送り迎えは彼がするようになった。