第649章 入籍(19)

鈴木和香は林夏音の声を聞くと、少し頭を下げ、唇の端に冷笑を浮かべた。

なるほど、林夏音と何事もなかったわけではなく、これまでの平穏は、今この瞬間の大波を引き立てるためだったのだ。

馬場萌子は林夏音が口を開いた瞬間に、台本がなぜこのように変更されたのかを理解した。彼女は鈴木和香のように冷静ではいられず、怒りで目が赤くなっていた。

「台本のことですか?」林夏音は鈴木和香と馬場萌子が自分を無視していることなど気にも留めず、手元の台本をめくりながら、わざとらしく驚いた様子を見せた。「あら、台本がこんな風に変わってるわ……」

もともと林夏音のことが気に入らなかった馬場萌子は、彼女のこの偽善的な言葉を聞き、さらに台本をこれほど改変されたことで、すぐさま怒りを爆発させた。「台本がこんな風になったのは、きっと誰かが恥知らずにも裏で手を回したからでしょう!」