第667章 携帯の中のメッセージ(17)

「お嬢様?来栖社長をお探しではありませんか?こちらです。」男性は立ち尽くしたまま呆然としている鈴木和香を見て、丁寧に声をかけた。

鈴木和香は青ざめた顔で、ぼんやりと男性に頷き、魂が抜けたような様子で男性についてエレベーターの方へ向かった。

男性は彼女のためにカードをスキャンし、最上階のボタンを押して、微笑みながら再度部屋番号を告げてから立ち去った。

鈴木和香は四方が冷たい壁に囲まれたエレベーターの中に一人で立ち、跳ね上がる赤い数字を見つめながら、心臓の鼓動が徐々に遅くなっていくのを感じた。

一階から最上階まで、エレベーターの所要時間はたった3分だったが、鈴木和香にとっては何世紀も経ったように感じられた。エレベーターが止まっても、彼女はなかなか動こうとせず、警告音が鳴り、ドアが閉まりかけた時になってようやく手を伸ばしてボタンを押し、ゆっくりと外に出た。

赤いカーペットが敷かれた廊下は静かだった。鈴木和香は目の前の案内板を見つめ、深く息を吸い込んだ。左に曲がり、いくつもの部屋を通り過ぎ、右に曲がって突き当たりまで行くと、ようやく1002号室の前に到着した。

鈴木和香は目の前の閉ざされたドアを見つめ、何度も手を上げかけたが、どうしてもインターホンを押す勇気が出なかった。

来栖季雄はこの中にいるはず。しかも外国人女性と一緒だという...彼は彼女より先にここに来ていた。今、二人は何をしているのだろう?

鈴木和香は自分が嫉妬に狂った女のように思われたくなかったが、この瞬間、彼女の妄想は止まらなかった。矛盾した気持ちで、来栖季雄を信じようとする一方で、彼とその外国人女性が一緒にベッドにいる光景を想像せずにはいられなかった。

別れていた4ヶ月間、彼はアメリカにいた。一体誰と出会ったのだろう?

陶器人形に添えられた手紙には、あれほど深い愛情が綴られていたのに。もう結婚までしているのに...

鈴木和香は自分の頑固さを実感した。こんな状況になっても、自分の目で確かめなければ気が済まないなんて。

そう、自分の目で確かめなければならない。あれほど愛していて、自分のことも愛してくれていた男が、自分を裏切るなんて信じられなかった。