第671章 携帯の中のメッセージ(21)

「ちょっと待って、先に水を飲むわ」そう言って鈴木和香は顔を上げ、一気に水を飲み干した。

そして空になったコップを来栖季雄に渡すと、まるで先ほど自分が言ったことを忘れたかのように、季雄に向かって急いで言った。「眠いから先に寝るわ。何かあったら明日にしましょう」

季雄が何か言う前に、くるりと身を翻して、とんとんと階段を駆け上がっていった。

来栖季雄はコップを握りしめ、階段の入り口に立ち、すぐに消えていく彼女の姿を見つめながら、思わず口角が上がった。

彼にはわかっていた……彼女が自分の聞きたくない言葉を避けようとして、必死に言い逃れようとしていることを。

だから……実は、和香、君は心の底で僕のことを本当に気にかけているんだね?

来栖季雄はコップを回しながら、階段の手すりに寄りかかり、壁に灯る壁灯を見つめていた。突然、長い間胸に重くのしかかっていた暗い影が、少しずつ晴れていくのを感じた。