声を出す間もなく、皆の目の前で、椎名佳樹に引っ張られて宴会場から出されてしまった。
赤嶺絹代と椎名佳樹が戻ってきたのは、まさにチャリティーパーティーが始まる時だった。
司会者がステージに立ち、マイクを握って、公式な祝辞を述べていた。
鈴木和香は鈴木夫人の隣に座り、椎名佳樹と赤嶺絹代が椎名一聡の両側に座るのを見た。親子二人は口論でもあったのか、表情がどちらも良くなかった。
チャリティーパーティーに来たからには、当然象徴的な意味で何かをオークションで競り落とすものだ。
実際、このようなチャリティーパーティーには、良い品物がないわけではないが、通常はフィナーレを飾るものとして登場し、もちろんそれらは一流の名門が競り合うものだった。
前半のオークション品はそれほど高価ではなく、ほとんどがアクセサリーや宝石、置物などだった。
オークションの流れはいつも同じで、鈴木和香は幼い頃から数え切れないほど見てきたので、目を閉じていても次に何が起こるか分かっていた。
約1時間が経過し、ついにチャリティーパーティーの最も重要な場面を迎えた。それまで眠気を誘っていた会場が、突然活気づいた。司会者までもが血が騒ぐように、マイクを持って巧みな話術で次に出てくる品物を紹介し始めた。「次にご紹介するのは『奇跡』と呼ばれる壁棚です。30人の職人が6年の歳月をかけて作り上げた稀世の逸品です。競り開始価格は24億円、それではこの『奇跡』と呼ばれる壁棚をご覧ください……」
司会者の言葉に合わせて、ステージ中央の黒い布が取り除かれ、深緑色の壁棚が姿を現した。その表面には様々な宝石が埋め込まれており、照明に照らされて眩いばかりの輝きを放っていた。
「本当に奇跡的ですね。それでは、オークションに移りたいと思います。開始――」
司会者の言葉が終わってから約30秒後、最初の入札があった。「24億6千万円」
「25億6千万円」
「26億円」
……
わずか20分ほどで、この『奇跡』の壁棚の価格は40億円にまで上昇した。しかし、会場ではまだ次々と価格を上げる声が続き、止まる気配はなかった。価格が60億円に達した時点で、入札者は2、3社にまで減少し、さらに4億円上がったところで、ついに鈴木家だけが残った。
「64億円、1回目」
「64億円、2回目」