だから特別に注意して見てみると、その人はすぐに隠れてしまった。そこで彼女は入り口に視線を向け、ぼんやりしているふりをしながら、目の端でずっとその盗撮している男性を観察していた。約5分後、ついに現行犯で捕まえた!
鈴木和香は今朝スキャンダルを報じられたばかりで、今も誰かに追いかけられて撮影されている。もし何か良くないものを撮られたら、一連の悪影響が出るかもしれない。
馬場萌子はすぐに視線を戻し、鈴木和香に注意しようとしたが、目の前に座っていた鈴木和香が突然立ち上がり、振り返って前方をじっと見つめていた。その表情と目は、少し驚きと少女のような恥じらいを含んでいた。
「和香、何を発狂してるの...」馬場萌子の言葉が途中で止まった。来栖季雄が彼女の視界に入り、鈴木和香の前に立っていた。周りにスマホで写真を撮っている人がたくさんいるのも気にせず、少し頭を下げ、華麗で冷たい声で「和香」と呼んだ。
来栖季雄が彼女を見る目は熱く、周りにこれほど多くの人がいなければ、彼は本当に彼女を抱きしめたいと思っているような印象を与えた。
「来栖スター?」馬場萌子は思わず口にしたが、すぐに周りに多くの人が見ていることに気づき、急いで口を閉じ、来栖季雄の後ろにぴったりとついている助手を見て、目で「これは一体どういうこと?」と尋ねた。
助手は馬場萌子の意図を理解したようで、肩をすくめて知らないというジェスチャーをした。
時間が約1分間止まったように感じた後、馬場萌子は急いで横に席を移動させ、助手に座るよう促した。そして、まだ来栖季雄を見つめたまま我に返っていない鈴木和香に声をかけた。「和香、来栖社長はアメリカから遠路はるばる戻ってきたんだから、きっとまだ食事していないわ」
鈴木和香はようやく我に返り、自分がさっきから来栖季雄をぼんやり見つめていたことに気づき、顔を赤らめながら内側に席を移動し、自分が座っていた席を来栖季雄に譲った。
鈴木和香と馬場萌子が注文したテーブルいっぱいの料理は、ほとんど手をつけられていなかったが、馬場萌子はウェイターを呼んでメニューを持ってきてもらい、来栖季雄と助手に一人一部ずつ渡し、ついでに食器も二組追加してもらった。
助手はすでに昼食を済ませていたので、清酒を一本だけ注文した。来栖季雄はメニューを簡単に見て、寿司を一人前だけ注文した。