第730章 来栖・鈴木夫婦(18)

鈴木夏美は手を上げて、車の窓をノックした。田中大翔はようやく我に返り、鈴木夏美を見ると、急いで携帯を置いて車から降り、車を回って鈴木夏美の手からスーツケースを受け取り、そのまま車のドアを開けた。「先に乗って、そんなに薄着で、風邪をひくよ」

鈴木夏美はつま先立ちして田中大翔の頬にキスをしてから、身をかがめて車に乗り込んだ。

田中大翔はスーツケースをトランクに入れ、車に乗り込んだ。エンジンをかけようとしたとき、鈴木夏美がシートベルトをしていないのを見て、身を乗り出してシートベルトを締めてあげた。すると鈴木夏美は手を伸ばして田中大翔の首に腕を回した。「私のこと、恋しかった?」

田中大翔は目元に笑みを浮かべ、頭を下げて鈴木夏美の唇に軽くキスをした。「恋しかったよ」

「どれくらい?」鈴木夏美は田中大翔に向かって再び唇を尖らせた。