電話を切ると、来栖季雄は書斎のバルコニーでしばらく立っていた後、携帯を握りしめ、そっと寝室に戻り、ベッドに上がった。腕を彼女の首の下に滑り込ませると、彼女はすぐに体を翻して彼の胸に潜り込み、夢の中で心地よい姿勢を見つけて、甘い眠りを続けた。
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昨夜、鈴木和香は思い切り泣いて、心に溜め込んでいた苦しみや暗い影をすべて吐き出した。翌日目覚めた時、昨日まで重く死にたいほど辛かった心が、不思議と軽くなっていた。
人生は決して順風満帆ではない。困難が突然訪れた時、最初は天地がひっくり返るような衝撃を受け、重圧に押しつぶされそうになり、時には命を絶ちたいという考えさえ浮かぶ。しかし、最も辛く暗い時期を乗り越えれば、実はそれほど大したことではなかったと気づくものだ。
鈴木和香にとって、彼女はすでに最悪の事態を覚悟していた。せいぜい一生人に指をさされ、反面教師として扱われるだけだ。