第795章 あの年の恋文(5)

鈴木和香は今回「うん」とさえ言うのも面倒くさそうに、ただ軽く頷いただけで、口を開けてぶどうを受け取り、視線はテレビから離れなかった。

来栖季雄は爪楊枝で一切れのメロンを刺しながら言った。「和香、俺はどうして父親になったんだろうな?」

鈴木和香は手を上げて、少し頭痛がする頭をさすった。

来栖季雄はすぐに爪楊枝を置き、手を上げて和香の頭をさすり始めた。「和香、どこか具合悪いの?病院に行った方がいいかな?今のあなたは一人じゃないんだから...」

鈴木和香は急に季雄の手を払いのけ、立ち上がった。「来栖季雄、今夜私が妊娠していると知ってから今まで、あなたが私に言った言葉の中に、赤ちゃん以外のことがあった?」

そう言うと、鈴木和香は来栖季雄をにらみつけ、バスルームへ向かった。

来栖季雄は急いで立ち上がり、和香の後を追った。「和香...」

「話しかけないで!」鈴木和香は振り返り、季雄の言葉を遮った。手を上げて彼を指さし、憤慨して言った。「来栖季雄、あなたがこれ以上赤ちゃんのことばかり気にして私を無視するなら、アメリカで妊娠した翌日、あなたが私に避妊薬を飲ませて赤ちゃんを殺そうとしたって、赤ちゃんに言いつけるわよ!」

来栖季雄は口をパクパクさせ、頭の中で計算してみた。妊娠一ヶ月...確かにあの夜だ...季雄はすぐに恐怖で青ざめ、反射的に和香に何か言おうとしたが、彼女はバスルームに入り、彼に何も言わせる余地を与えず、バスルームのドアを強く閉めた。

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鈴木和香はお風呂を済ませ、バスルームから出てきたが、依然として季雄を無視し、ベッドに上がり、布団をかぶって目を閉じた。

来栖季雄はバスルームに入り、急いでシャワーを浴び、彼もベッドに上がり、部屋の明かりを消した。

寝室に残された薄暗い常夜灯の光の中、季雄は横を向いて不機嫌な和香を見つめ、そっと手を伸ばして彼女の手を握った。振り払われ、また握り、また振り払われ、もう一度握ると、今度は振り払われなかった。

来栖季雄は鈴木和香の柔らかい手を軽く握り、優しい声で言った。「和香、僕はただ嬉しすぎただけだよ、怒らないで。」