第795章 あの年の恋文(5)

鈴木和香は今回「うん」とさえ言うのも面倒くさそうに、ただ軽く頷いただけで、口を開けてぶどうを受け取り、視線はテレビから離れなかった。

来栖季雄は爪楊枝で一切れのメロンを刺しながら言った。「和香、俺はどうして父親になったんだろうな?」

鈴木和香は手を上げて、少し頭痛がする頭をさすった。

来栖季雄はすぐに爪楊枝を置き、手を上げて和香の頭をさすり始めた。「和香、どこか具合悪いの?病院に行った方がいいかな?今のあなたは一人じゃないんだから...」

鈴木和香は急に季雄の手を払いのけ、立ち上がった。「来栖季雄、今夜私が妊娠していると知ってから今まで、あなたが私に言った言葉の中に、赤ちゃん以外のことがあった?」

そう言うと、鈴木和香は来栖季雄をにらみつけ、バスルームへ向かった。

来栖季雄は急いで立ち上がり、和香の後を追った。「和香...」