第796章 あの季雄の恋文(6)

来栖季雄は鈴木和香を抱く力を少し強めた。長い間抱きしめた後、ようやく頭を下げ、鈴木和香の耳元で、人を魅了するような声で言った。「和香、ありがとう。僕は一生をかけて君に尽くすよ」

僕を愛してくれてありがとう。

僕の妻になってくれてありがとう。

僕の子供を身ごもってくれてありがとう。

どんな言葉を尽くしても感謝の気持ちは表せない。だから、残りの人生をかけて、精一杯君に尽くすよ。

一生涯。

なんて贅沢で儚い三文字だろう。でも不思議と来栖季雄の口から発せられると、信頼感が湧いてくる。

鈴木和香は手を上げて、来栖季雄の腰に回した。

夜は静かで、ベッドの上の二人はただ静かに抱き合っていた。

どれくらい時間が経ったのか、来栖季雄が突然口を開いた。「和香、絶対に赤ちゃんには言わないでくれ、僕が君に避妊薬を飲ませていたことを…」

来栖季雄の言葉が終わらないうちに、鈴木和香が彼の胸から顔を上げ、視線を向けてきた。彼はすぐに話を変えた。「和香、今夜の演技は本当に素晴らしかったよ」

鈴木和香は、冷たく無愛想な来栖季雄がこんなに臨機応変な一面を持っているとは知らなかった。思わず「プッ」と笑い出し、そして試合前にネット上で暴露されたゴシップを思い出して、好奇心から尋ねた。「季雄、ハリウッドの映画、本当に投資したの?」

「うん、ルーシーの夫もその監督の一人だよ。最初にその映画を企画したのは僕たち二人なんだ」来栖季雄は詳しく説明し、さらに付け加えた。「前回アメリカに出張に行ったのは、この映画のためだよ」

鈴木和香は突然、来栖季雄が出発前に助手に書いたメールで、彼女に主演女優賞の座を取ってやると言っていたことを思い出し、思わず口にした。「じゃあ季雄、私をエントリーさせて、コンテストに参加させて、途中であんな大きなスキャンダルがあったのに、結果は本当に公正だったの?」

「もちろん」来栖季雄は真剣な表情で鈴木和香を見つめ、優しい声で言った。「人格をかけて保証するよ、君のすべての試合の結果は真実で、一切の水増しはない」