第799章 あの年の恋文(9)

来栖季雄は眉間にしわを寄せ、財布を再び取り出し、中に手を入れて探ると、薄い青色の封筒を取り出した。

封筒は年代物のように見え、周りが少し毛羽立っており、表面の赤いハートマークは色あせて、白い下地が見えていた。

これは、学生時代に女の子たちがよく遊んでいたものに似ているな……鈴木和香が彼のポケットに入れたのだろうか?

来栖季雄はその封筒を手に取り、迷いながらもまだ開けようとしていなかった。そのとき、側にいた秘書が好奇心を抑えきれず近づいてきた。「来栖社長、これは何ですか?ラブレターみたいに見えますね?」

秘書が言わなくても、彼はその封筒を見て、ラブレターを連想していた……確かに、学生時代には机の引き出しにこのような色とりどりの封筒をよく見かけたものだ。ただ、当時の彼の心には一人しかおらず、他人に対して何の興味も持てず、持とうともしなかった。だからそれらの封筒は開封する気にもならず、最終的にすべてまとめて学校のグラウンド脇のゴミ箱に捨ててしまったのだ。

しかし、中身を見ていないので、ラブレターかどうかは確信できなかったが、来栖季雄は秘書のその一言で顔が赤らんでしまい、急いでその封筒を折りたたみ、財布と一緒にポケットに入れると、立ち上がって淡々と言った。「会社に戻ろう」

会社に戻る道中、来栖季雄は後部座席に座り、頭の中はその手紙のことでいっぱいだった。

だから和香が進んで彼のスーツを整えてくれたのか、この手紙を彼のポケットに忍ばせるためだったのか。一体何の用事で、直接話せずに手紙という形で伝えなければならなかったのだろう?

午後3時に会議があり、会社に到着したのは2時半だった。来栖季雄は自分のオフィスに戻り、ドアに鍵をかけ、デスクに座ってからポケットからその手紙を取り出した。自分でも何がどうなっているのか説明できないが、心の奥底から緊張感が湧き上がってきた。それは若い頃、初めて鈴木和香と近距離で接したときの、どうしていいかわからなかった感覚とまったく同じだった。

来栖季雄はその封筒をしばらくじっと見つめた後、深く息を吸い、少し緊張した指先で封筒を開け、中からハート形に折られた薄いピンク色の便箋を取り出した。