第798章 あの年の恋文(8)

翌日は環映メディアの年次株主総会で、来栖季雄は必ず出席しなければならなかった。

会議は午前10時からで、彼は7時半に起床し、ダイニングルームへ行って、あっさりとした白粥を煮込んだ。

秘書は渋滞で会議に遅れることを恐れ、8時半には車で桜花苑に来栖季雄を迎えに来ていた。

到着した時、来栖季雄は2階で鈴木和香の起床を手伝っていた。秘書は1階で15分も待ち、ようやく来栖季雄が皇太后様でも扱うかのように、細心の注意を払って鈴木和香を階下へ案内するのを見た。

秘書はようやく出発できると思ったが、来栖季雄は慌てる様子もなくダイニングルームに座って鈴木和香と朝食を取り始めた。まるで時間の概念がないかのように、鈴木和香がお粥一杯、牛乳一杯、卵一個を食べ終えるのをじっと見守り、それからゆっくりと服を着替えるために2階へ上がった。