来栖季雄がここまで聞いたとき、心の中ですでに椎名佳樹が次に何を言おうとしているのかうっすらと予想していたが、それでも知らないふりをして尋ね返した。「どんな字?」
「彼女はその時、一文を書いたんだ……」椎名佳樹は眉をひそめて少し考えてから口を開いた。「有生之年,我最爱你(生きている限り、私はあなたを最も愛しています)って。僕はそれを、有生之年,我只爱你(生きている限り、私はあなただけを愛しています)に直したんだ。明らかに『只(だけ)』は『最(最も)』より良いだろ?『只』は唯一を表し、『最』は多くの中で一番という意味だから……どう?僕の提案、悪くないだろ?」
椎名佳樹は、かつての自分の一字の修正について、思わず得意げに語った。
しかし、傍らの来栖季雄の心は、すでに大きく揺れ動いていた。
なるほど、かつての鈴木和香と椎名佳樹は、お互いに気持ちを伝え合っていたわけではなく……鈴木和香は椎名佳樹にラブレターの添削を頼んでいたのだ。
そのラブレターは、鈴木和香が今日彼に渡したものだが、何年も前に書かれたものだった。つまり、彼が最初に推測したとおり、鈴木和香は彼がこのラブレターを書いた時点ですでに彼のことを好きになっていたということ?
それはつまり、これほど長い年月、彼一人が必死に彼女を愛していたわけではなく、二人がお互いに全力で愛し合っていたのに、誰も勇気を出して「愛している」と口にできなかっただけなのだろうか?
椎名佳樹はしばらく一人で自己陶酔していたが、突然体を翻して、好奇心に駆られて来栖季雄の前に顔を寄せた。「兄さん、和香のあのラブレター、誰に送るつもりだったか知ってる?当時、何度も聞いたんだけど、彼女は絶対に教えてくれなかったんだ」
自分の思考に沈んでいた来栖季雄は、椎名佳樹が何を質問したのかまったく聞いていなかった。彼の胸は興奮と喜びでいっぱいだった。
彼は思った。人生で最も心を揺さぶられることの一つは、長年片思いしていた相手が、実はあなたのことも同じように思っていたと突然気づくことだろう。