第806章 古き日々を取り戻す(6)

「終わったよ、すぐに帰るから。疲れてたら先に休んでていいよ、私を待たなくても……うん、牛乳?分かった、帰りにスーパーに寄るよ。他に食べたいものや必要なものある?果物は?他には?ないの、じゃあ……」

椎名佳樹は電話に向かって饒舌に、優しい表情で少しも苛立ちを見せない来栖季雄を目を丸くして見つめていた。しばらくして、ようやく瞬きをして、くそ、なんで彼が長々と話しているのに、返ってくるのはたった「うん」「ああ」の五つの言葉だけなんだ?鈴木和香のちょっとした様子伺いの電話で、彼女は十語も話さなかったのに、彼は何十語も返したじゃないか?

明らかに彼と鈴木和香は両方とも季雄に話しかけているのに、どうしてこんなに扱いが違うんだ?

まるで天と地ほどの差だ……

椎名佳樹は思わず沈んだ声で愚痴った:「扱いの差はまだいいとして、昔は俺に『兄さん』って呼んでた奴が、今じゃ俺が『義姉さん』って呼ばなきゃいけないなんて……」