第807章 昔日の時を取り戻す(7)

実は、できることなら、彼は本当に願っていた。母親でも、来栖季雄と鈴木和香でも、皆が幸せに過ごせることを。

しかし多くの場合、物事はそう簡単に両立できるものではない。

ここまで考えた椎名佳樹は、思わず長いため息をついた。

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鈴木和香は馬場萌子と一緒に病院で検査を受けたが、来栖季雄はまだ少し心配で、わざわざ人を通じて東京都で最も優れた産婦人科医を探し、予約を取り、ある陽光が明るく輝く午後、鈴木和香を連れて再び病院へ行った。

約2時間を費やし、一連の検査結果が出た。妊婦と胎児はともに健康だった。

病院を出たのは、午後3時だった。

数日前までは厳冬と変わらないほど寒かったが、先週末から突然気温が上がり始め、日に日に暖かくなっていった。東京都の街路に咲く福寿草は一夜にして満開となり、柳の木は芽吹き始め、街行く人々は重い羽毛服を脱ぎ捨てていた。