第803章 古き日々を取り戻す(3)

椎名佳樹は顔を上げて向かいの来栖季雄を見つめ、酒杯を握る手が少し止まった後、女将に頷いた。

女将はメニューを持って尋ねた。「来栖社長と椎名様、今回も前回と同じ料理でよろしいですか?」

「ええ」椎名佳樹は返事をし、テーブルの上のビールを指さした。「もう数本持ってきてください」

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食事の間、椎名佳樹と来栖季雄の二人はほとんど会話をせず、時々乾杯して酒を飲むだけだった。

この家庭料理店の商売は、本当に最悪なほど悪く、彼らが食事を終えて会計を済ませるまでの間に、全部で3、4組のお客さんしか来なかった。

来栖季雄と椎名佳樹の席からそう遠くない場所に座っていた一組の中の女性が来栖季雄を認識し、ずっとスマホで来栖季雄と椎名佳樹の写真を撮り続け、そして隣の人に興奮して何か言っていた。最後に来栖季雄が席を立って出ていくとき、その女性はペンを持って来栖季雄の前に駆け寄り、サインを求めた。