第810章 古き日々を取り戻す（10）

「学生の頃、私が一番嫌いだったのは数学の問題を解くことだった。難しくて死にそうだった」鈴木和香は今では全く理解できない数学の公式を見て、思わず感慨深く言った。そして突然、学生時代のある小さな出来事を思い出し、興奮して来栖季雄に話し始めた。「数学の問題と言えば、とても不思議なことを思い出したわ」

来栖季雄は片手を優雅に窓枠に置き、横を向いて鈴木和香を見つめながら尋ねた。「どんなこと？」

「高校2年生の前期のことなんだけど、1組と3組の数学の先生って同じ人だったでしょ？あなたも知ってるはずよ。あの先生には特徴があって、1ヶ月おきにテストをするのが好きだったの。実は数学の他の内容はまだ良かったの。全部できるわけじゃないけど、少なくとも大部分はできた。でも放物線の内容だけは見るだけで頭が痛くなった。当時、放物線のテストがあった時、3組が先に数学の授業があったから、先にテストを受けたの。私は事前に夏美に頼んでおいて、問題を密かに書き写してもらって、夜に佳樹兄に正解を出してもらおうと思ってた。そうすれば翌朝の1時間目の数学のテストで、答えをそのまま写せるはずだった。でも、結果はどうなったと思う？」鈴木和香はここまで話して、自分でも信じられないという表情を浮かべた。「当時私は体育の授業を受けていて、教室に戻ったのは放課後だったの。鈴木夏美に問題を聞く時間もなかったのに、机の中に数学のテスト用紙を見つけたの。しかも答えが全部埋まっていたのよ...誰がそんな先見の明があって、テスト用紙を私の引き出しに入れたのかしら」