高級マンション。
鈴木知得留が去った後、北村忠がタバコを一本吸い、冗談めかして言った。「冬木若旦那は本当に奥さん思いだな。奥さんがいる時はタバコも吸わせないなんて。」
冬木空は北村忠に返事をせず、自分もタバコを一本つけた。
北村忠は煙を吐きながら、目の前の煙が漂うのを見て笑った。「お前が老狐だって言われるのは伊達じゃないな。」
冬木空は北村忠を一瞥した。
北村忠は意味深げに続けた。「手間暇かけずに手に入れたな。お前の性格からして、素性の分からない鈴木知得留を側に置くはずがないと思ってたんだ。なるほどね。」
「勝手な憶測はよせ」冬木空は冷たく口角を上げて言った。
「そうだな、誰がお前の考えを読めるってんだ?!」北村忠は呟いた。
子供の頃から一緒に育ってきたが、今でも冬木空が何を考えているのか分からない。