第34章 冬木空の悪い癖が多すぎる

斎藤咲子は夕食を急いで済ませ、箸を置いて口を開いた。「お父さん、ちょっと話があるの」

「うん」斎藤祐は食事を続けながら、頷いて返事をした。

「留学を申請したの」斎藤咲子は一言一言はっきりと言った。「全部準備は整ってる。来週の月曜日に出発するわ」

斎藤祐は信じられないような目で斎藤咲子を見つめた。

他の人たちも同じような反応だった。

斎藤咲子は鋭い視線を感じたような気がした。

斎藤咲子は気にせず、続けて言った。「心配させたくなかったから、事前に言わなかったの。でも、もう大人になったし、数年間留学して帰ってくれば、視野も広がるでしょう」

幼い頃から、斎藤祐は斎藤咲子をあまり干渉してこなかった。いつも順調に成長していると思っていたので、この瞬間は明らかに受け入れがたかったが、咲子の母親との過去があるため、咲子に対していつも従順だった。この時もそうだった。

「外国では気をつけるんだぞ」と彼は言った。

「はい」斎藤咲子は笑顔を見せた。とても甘い笑顔だった。「お腹いっぱい。ゆっくり食べてね」

この時、声からも喜びが伝わってきた。

斎藤咲子はダイニングを出て自分の部屋に戻った。

まだ数日あるのに、彼女は荷造りを始めた。

自分にも少し自由を与えるべき時だと思った。時々生活に疲れを感じていた。

長い時間かけて荷造りをしたが、実際に持っていけるものはそれほど多くなかった。お金に困っているわけではないので、外国で買えるものは現地で購入すればいい。

部屋を見回して、もう荷造りするものがないことを確認すると、パジャマを持ってバスルームに向かった。

広いバスルームの鏡に映る湯気に包まれた体を見つめながら、無意識に平らな腹部に手を当てた。喉が詰まり、目が赤くなってきた。

人間は冷血な生き物だと、熱いシャワーで体を洗いながら思った。罪悪感も洗い流せるかもしれない。

シャワーを終えてバスルームを出ると、何気なく床から天井までの窓を開けてバルコニーに出て空気を吸った。その瞬間、別荘の正門で村上紀文が加賀千明を見送っているのが目に入った。二人は強く抱き合い、その後村上紀文は優しく加賀千明の唇にキスをした。イケメンと美女、まあ見栄えはいい。

斎藤咲子はただ淡々とそれを見つめていた。長いキスの後、二人が離れ、村上紀文が加賀千明を彼女の専用車まで送るのを見守った。