第44章 事件の始まり1妊娠

翌日。

「冬木若旦那が鈴木さんにプロポーズ、その情熱的でロマンチックな姿に、皆が羨望の眼差しを向けた。」

トップニュースが、メディアを席巻した。

鈴木知得留は目覚めてすぐにプッシュ通知のニュースを見て、昨日の群衆の中にきっとメディア関係者がいたのだと悟った。冬木空というずる賢いビジネスマンのことだから、言うまでもなく冬木家の株価はぐんぐん上昇しているはずだ。

彼女はニュースの内容にはあまり関心がなかった。

記事に載っている冬木空とのキスの写真、ロマンチックな花火の数々...確かに多くの少女たちの心を揺さぶるものだった。

同時刻、隣の部屋では、根岸佐伯がこれらのニュースを見て目を真っ赤にしていた。なぜ鈴木知得留がこんなに華やかな生活を送れるのに、自分はこんなに惨めな思いをしなければならないのか!

鈴木家のお嬢様の座は、本来自分のものだったはず。自分の、自分の、自分のものだったはずなのに。

ドアをノックする音が聞こえ、根岸史子が入ってきた。根岸佐伯の赤く腫れた目を見て、ため息をつきながら言った。「お母さんも辛いわ。同じ女として、こんな目に遭うなんて心が痛むわ。でも、あなたと晴人の間は...」

「そんなことじゃないの!私はただ鈴木知得留の傲慢さにうんざりしているだけ。今日のトップニュースを見て!世界中が彼女を羨ましがっている。私、もう耐えられない。ママは鈴木知得留を冬木空と結婚させないって言ったのに、今じゃ誰よりも幸せそうじゃない!」根岸佐伯は感情を抑えきれず、叫びながら泣き出した。

根岸史子は根岸佐伯の崩壊した様子を見て、表情が重くなった。

昨夜一晩中考えていたが、根岸佐伯のお腹の子供は確実に堕ろさなければならない。しかし、そう簡単に諦めるのも悔しかった。今でも根岸史子は、田村厚と根岸佐伯が関係を持ったことには必ず鈴木知得留が関係していると疑っていた。なぜ鈴木知得留が突然人が変わったように見えるのかは分からないものの、むしろそれが鈴木知得留を早めに片付けたいという決意を強めた。本来なら、もう少し時間を置くつもりだったのに。

すべての計画が鈴木知得留のせいで、最初からやり直さなければならないようだ。

根岸史子は深いため息をつき、「お母さんは昨夜一晩中考えていたんだけど、鈴木知得留を懲らしめる方法を思いついたわ」