依然として賑やかな婚約パーティー。
鈴木知得留は挨拶を一通り済ませ、隅で佇む斎藤咲子の姿を見つけた。
実は最初から彼女の存在に気付いていた。まるでこの婚約パーティーと何の関係もないかのように控えめにしていて、彼女が斎藤家のお嬢様だということすら忘れられそうなほどで、すべての注目は村上紀文という他家の人物に集まっていた。
鈴木知得留は時々、斎藤咲子の境遇が自分と似ていると感じていた。二人とも母親が傍にいなく、悪意のある人々に主役の座を奪われた。だから彼女に対して、何となく同じ境遇の者同士という気持ちを抱いていた。
彼女は自ら歩み寄った。
斎藤咲子の瞳が僅かに動き、何事にも心を動かされないかのように淡々としていた。
彼女は鈴木知得留を見つめ、シャンパングラスを取り上げられるのを見守りながら、通りかかったウェイターに向かって「白湯をお願いします」と頼むのを聞いていた。