第39章 彼は童貞のままで恥ずかしいと思う(イベント日)

冬木空は鈴木知得留を家まで送り、運転手に冬木邸まで戻るように指示した。

北村忠が口を開いた。「先に僕を送るべきだったよ。僕の方が近いのに。田中おじさんの仕事を増やしているじゃないか」

「増やしてない」と冬木空は言った。「田中おじさん、もう帰っていいよ。北村、タクシーで帰れ」

「冬木空、お前本当に嫁さんができたら友達を忘れるタイプだな!」と北村忠は叫んだ。

「ああ、その通りだ」冬木空は余計な言葉を付け加えず、そのまま車を降りた。

ついでに北村忠も引きずり降ろした。

北村忠は恨めしそうに彼を見つめた。

「これからは聞くべきでないことは聞くな」と冬木空は一言残し、そのまま邸内へ向かった。

北村忠は歯ぎしりした。

冬木空というこの老狐は、いつもこうして仕返しをしてくる。

彼は憤然と身を翻した。

その時、別の黒塗りの車から降りてきた冬木心と目が合った。

二人は視線を交わした。

冬木心は視線をそらし、彼の傍を通り過ぎて邸内へ向かった。

「冬木心」と北村忠は突然彼女を呼び止めた。

冬木心の足が一瞬止まった。

「僕のことを何だと思ってるんだ?」と北村忠は尋ねた。

今日は気分が優れなくて、だから...少し理不尽な振る舞いをしたくなった。

冬木心は一瞬置いて言った。「前にも言ったでしょう。私たちの婚約は両親の決めたことで、いつでも破棄できます」

北村忠は冷笑した。

冬木心は彼の感情など気にも留めず、「遅くなりました。北村さん、お気をつけて」

歩き出そうとした瞬間。

北村忠は冬木心の腕を掴んだ。

冬木心は眉をひそめた。

北村忠は冬木心を自分の胸に引き寄せ、彼女が抵抗する間もなく、突然唇を奪った。

冬木心は胸が締め付けられ、次の瞬間激しく抵抗した。

二人は揉み合いになり、冬木心は振り払った。

振り払った瞬間、冬木心は止めどなく唇を拭い、嫌悪感を露わにした。

しかし北村忠は気にも留めない様子で、笑いながら言った。「冬木お嬢様は僕をそんなに嫌がるんですか?実を言えば、あなたにはもう興味を失った男がいるんでしょう?」

冬木心は彼を睨みつけ、目に涙が浮かんだ。

北村忠は言った。「成人したばかりで同棲して、飽きられて帰ってきたくせに、何を清楚ぶってるんだ。兄貴の面子がなければ、こんな中古なんか拾いたくもない」