第46章 事件の始まり3 濡れ衣を着せる

鈴木邸は一瞬にして混乱に包まれた。

救急車はすぐに到着し、鈴木知得留は根岸佐伯の青ざめた顔を見ながら救急車に乗せられるのを見つめ、少し躊躇した後、一緒に病院へ向かった。

根岸佐伯はすぐに手術室へ運ばれ、鈴木山は知らせを受けてすぐに病院に駆けつけ、田村厚も慌てて走ってきて、焦りながら尋ねた。「どうしてこんなことに?昨日まで元気だったのに、どうして突然こんな事故が?」

根岸史子は目が腫れるほど泣いていて、首を振りながら言った。「分かりません。昨日まで元気だったのに、今朝起きたらベッドが血だらけで...」

「医師は何と?」

「まだ分かりません。これだけ出血があると、おそらく赤ちゃんは...」根岸史子は言いながら、また涙を流した。

鈴木山は妻を見つめ、彼女を抱きしめながら言った。「焦らないで、医師の話を待とう」

根岸史子は弱々しく鈴木山の肩に寄りかかり、すすり泣いた。

廊下は一時静かになり、重苦しい雰囲気が漂っていた。

しばらくして、扉が開き、医師が出てきた。

全員が一斉に駆け寄った。

医師はため息をつきながら言った。「患者さんに中絶手術を施しました」

根岸史子の体が震えた。

鈴木山は彼女の肩を叩いて慰めた。

根岸史子は尋ねた。「本人の方は?」

「現在、生命の危険はありませんが、大量出血の後に精神的なダメージも受けていますので、ご家族の方々は十分な愛情を持って接してください」

「ありがとうございます」

医師は頷き、やむを得ない表情で立ち去った。

間もなく、根岸佐伯が運び出されてきた。顔色は以前よりもさらに青ざめていた。

「佐伯、大丈夫よ、大丈夫」根岸史子は急いで駆け寄って慰めた。

田村厚も特に心配そうで、ずっと根岸佐伯の手を握っていた。

「でも赤ちゃんが...」根岸佐伯は涙を流した。

「泣かないで、泣かないで。今は産後の養生中なの。いい子だから、泣かないで」根岸史子は慰め、母娘の深い情を見せた。

鈴木知得留は遠からず近からずの距離に立ち、この一家が何を演じているのか考え始めた。良いことが起こるとは思えなかった。

根岸佐伯は手術後、鈴木邸に戻された。

まだ非常に衰弱しており、ベッドに横たわる姿は極めて哀れに見えた。

根岸史子は常に傍らで献身的に世話をし、田村厚も一歩も離れなかった。