第56章 一審(1)私は冬木空を愛している!

月曜日、裁判の日。

冬木空は確かに彼女に有効な証拠を渡していなかった。開廷前夜に電話で無罪弁護を進めるよう伝え、彼女の事件の後処理にもう少し時間が必要で、控訴審で本格的に動くと言った。

彼女は冬木空を信じていた。なぜかはわからないが、ただ信じていた。

おそらく前世で安心感を与えられたからだろう。

それだけ単純なことで、彼女は転生後、彼に心を決めたのだ!

彼女は車に乗って法廷へ向かった。道中はとても静かだった。

鈴木友道は運転しながら何度か話しかけようとしたが、鈴木知得留が一言も発しないため結局何も言わず、車はすぐに法廷の正門前に停まった。

車を降りると、大勢の記者が一斉に押し寄せてきた。

鈴木知得留の一瞥で、道明寺華は素早く彼女の前に立ち、記者たちを掻き分けながら、彼女を法廷内へと護送した。

記者が多かったため、鈴木知得留一行の歩みは滞りがちだった。

「鈴木さん、今回の事件について何かお話しいただけますか?」ある記者が尋ねた。

鈴木知得留は答えたくなかった。

話すことなど何もなかったからだ。

「鈴木さん、実の妹を毒殺しようとしたことを後悔していますか?」

「鈴木さん、今回どれくらいの刑期になると思いますか?」

鈴木知得留は相変わらず無視を続けた。

「鈴木さん、冬木家があなたの悪行により婚約を解消しようとしているという噂がありますが、これについてどう思われますか?」

「鈴木さん、以前の記者会見で田村厚とは感情がないと言い、むしろ冬木若旦那と相思相愛だと話されましたが、実際はすべて嘘だったのではないですか?」

鈴木知得留は法廷の入り口まで来て、スムーズに入れるはずだったが、この時突然足を止めた。質問した記者の方を振り向いた。

記者たちも一瞬静まり返り、フラッシュが彼女の白い頬に絶え間なく照らされた。

鈴木知得留は質問した記者に向かって、一字一句はっきりと言った。「これは一度だけ言います。よく覚えておいてください!」

場内が静まり返った。

鈴木知得留は再び口を開いた。「私は田村厚なんか好きじゃない。私は、冬木、空を、愛して、います!」

後半の五文字は、一文字ずつ区切って、力強く響き渡った。

言い終わると、記者たちの反応を待たずに大股で法廷に入り、開廷を待った。