法廷にて。
田村厚が説明を終えると、原告側の弁護士である加藤健が尋ねた。「田村さんの話には、証拠はありますか?」
「はい、あります」田村厚は急いで答えた。「私と鈴木知得留は大学時代、学生会の全員が知っている仲でした。写真もあります。また、学生会のメンバーにも証言に来てもらいました。そして、あの夜、知得留が私にキスをしてきた動画もあります」
「では、証拠を提示してください」加藤健が言った。
田村厚は大学時代の知得留との親密な写真の数々と、あの夜のキスの動画を提出し、さらに同級生一人を証人として呼び、二人の関係を証明した。
これらすべての人的証拠と物的証拠により、鈴木知得留は弁解の余地がなく、犯罪の事実は明白だった。
加藤健はすべての証拠を裁判席に提出し、裁判長に敬意を表して言った。「私の陳述は以上です。被告人への判決をお願いいたします」
裁判長は頷き、被告側に向かって言った。「被告側は何か言い残すことはありますか?」
「はい」藤田文は席から立ち上がり、裁判長に敬意を表して言った。「私は依頼人の鈴木知得留の無罪を主張いたします」
その言葉に、法廷内の全員が驚きを隠せなかった。
根岸佐伯は傍聴席に座ったまま、表情を変えたが、すぐに平静を装った。
鈴木山は来ていなかった。多くの記者が追いかけてくることは明らかで、この時に現れるはずがなかった。鈴木友道と道明寺華が傍聴席で彼女を待っていた。
法廷で、藤田文は再び口を開いた。「私の依頼人は根岸佐伯を害したことはありません。原告側のすべての主張は推測に過ぎません。依頼人の犯行動機を推測し、依頼人が使用人に堕胎薬を飲ませて根岸佐伯を流産させたと推測し、依頼人が田村厚に未練があると推測する、すべては推測に過ぎないのです!」
「異議あり!」加藤健は席から激しく立ち上がった。「裁判長、被告の犯罪は明白な事実であり、単なる推測ではありません。我々には人証も物証もあります。どこが推測だというのですか?」
藤田文は先輩の迫力に一瞬たじろいだ。新人にとって、法廷での経験を積む機会は少なく、この状況で少し自信を失っているようだった。
彼は落ち着きを取り戻し、加藤健を直視して言った。「あなたの言う物証とは何ですか?私が見た限り、すべては人証です」