病院の廊下にて。
鈴木山はため息をつき、「知得留、父さんが君を疑って申し訳なかった」と言った。
鈴木知得留は笑って、「気にしないでよ、お父さん。こんなことが起こるなんて誰も予想できなかったし、それに佐伯は家では良い子だったから、こんな陰湿なことをするなんて思いもしなかったわ」と答えた。
鈴木山は頷いて、「確かに予想外だった。裁判所から佐伯の自作自演だったと電話があった時、耳を疑ったよ。でもすぐに嬉しくなった。私の娘、鈴木山の娘がそんなことをするはずがない!これからは誰も私の娘の悪口は言えないぞ!」
「そうね」鈴木知得留は頷いて、「小さい頃からお父さんに育てられたんだもの。こんなに素晴らしいお父さんの娘だから、私だってそんなに悪い子のはずがないわ」
「まったく、相変わらず甘い口を利くね」鈴木山は満足げに言った。
鈴木知得留は言った、「お父さん、昔は私が分別がなくて、たくさん迷惑をかけてごめんなさい」
「私の娘なんだから当然だよ」鈴木山は溺愛するような表情で、「でも最近起きたことで、お前が本当に大人になったと感じたよ。これからは、お前の意見をもっと聞かないとね」
鈴木知得留はまた笑って、甘えるように鈴木山の胸に寄り添った。
その瞬間、なぜか頭の中に毒舌な冬木空の姿が浮かんだ。田村厚を少し見ただけで嫉妬して大騒ぎした彼が、自分が父の胸で甘えているところを見たら、きっと発狂するだろうと思った。
そして彼女は実際に冬木空に従って、父の胸から離れようとした。
その時。
廊下に急ぎ足の音が響いた。
鈴木知得留と鈴木山は急いで振り向いた。
少し離れた場所にいた鈴木友道も驚いて振り向いた。
看護師が慌てた様子で大声で言った、「鈴木チーフ、奥様が病室で手首を切られました...」
鈴木山は急いで病室へ向かった。
鈴木知得留は一瞬呆然とした。
根岸史子は鈴木家に居座るためにここまでするとは。
これほどの侮辱を受けてもなお、こんな極端な方法で...一体、根岸史子はどんな大きな陰謀を隠しているのか。
「姉さん、何をぼんやりしているの」鈴木友道が声をかけた。
鈴木知得留は我に返り、鈴木友道と共に病室へ向かった。
到着すると、根岸史子は医療スタッフによって緊急に救急室へ運ばれていた。
鈴木山は後を追った。