愛だからでしょう。
鈴木知得留は頭の中でこの五文字を考えていた。記者たちの群れからどうやって抜け出したのかも覚えていない。気がついたとき、鈴木知得留は既に車の中に座っていた。冬木空が隣に座り、道明寺華が助手席に、鈴木友道が運転席に座っていた。藤田文は自分で帰っていった。
車内は静かだった。
我に返った鈴木知得留は大きな声で言った。「どうしてここに来たの?!」
「来てほしくなかった?」冬木空は眉を上げ、静かな声で言った。「それに、君が態度を表明したからね。」
「態度?」鈴木知得留は困惑した。
何の態度を表明したというのだろう。
まだ理解できないうちに、冬木空が言った。「証拠は全て揃った。もう誰かが私に注目することを恐れる必要はない。」
だから、もう遠慮する必要はないということだ!
「こんなに早く?」鈴木知得留は驚いた。
昨夜はまだないと言っていたのに、今はもう大丈夫だと。
「君が冤罪のままでいるのを見過ごすわけにはいかないからね。」
鈴木知得留はじっと冬木空を見つめた。
この男はいつもこんなにさらりと物事を言う。
はっきりと目の下のクマが見える。きっと彼女の事件のために多くのことをしてくれたのだろう。
鈴木知得留は手を伸ばし、指を冬木空の頬に触れた。
その瞬間、彼が痩せたようにさえ感じた。
冬木空は彼女の愛撫に慣れていないようで、顔を横に逸らし、避けた。
鈴木知得留は手を下ろし、つぶやいた。「冬木空、あなた私のことを好きになったでしょう。」
「随分と自信があるんだね?」冬木空は淡く笑った。その笑顔からは何の感情も読み取れず、彼女のことを好きかどうかなど分からなかった。
鈴木知得留は深く息を吸い、真剣に言った。「あなたは私が有罪判決を受けて記者に囲まれることを知っていたから、助けに来てくれた。ずっと自分の体調のことを公表したくなかったのに、理由は分からないけど、私のために記者の前ではっきりと話してくれた……」
「言っただろう。必要性を感じなかっただけで、わざわざ説明する気にならなかっただけだと。」
「じゃあ、なぜ今は必要になったの?」鈴木知得留は尋ね、そして答えた。「やっぱり私のためでしょう!」
冬木空はその時、一瞬黙り込んだ。