第88章 渣男を懲らしめるはずが、なぜカップルの甘い場面なの?!

鈴木知得留は階段を降りて冬木空を探しに行った。

裏庭で、北村忠は遠くから鈴木知得留が近づいてくるのを見て、つぶやいた。「お前の婚約者が来たぞ。邪魔になりそうだから、俺は行くよ」

「タンクも連れて行け」

「なんでだよ?」北村忠は逆毛が立った。

その瞬間、まるで鉄のオンドリのようだった。

「邪魔者は全部出て行けと言っただろう」冬木空は立ち上がった。

北村忠は不機嫌そうにタンクを引っ張った。

一体誰が犬を飼いたいと言ったんだ、誰が?!

頭がおかしくなったのか、犬を買うなんて買うなんて……

北村忠は怒り心頭で立ち去り、鈴木知得留の傍を通り過ぎた。

鈴木知得留は挨拶しようとしたが、北村忠がタンクを連れて、誰かに借りがあるかのような不機嫌な顔をしているのを見た。

彼女は声をかけるのを諦め、また冬木空が「お嫁さん」をいじめたのだろうと推測した。

彼女は冬木空の前で足を止めた。

冬木空は口角を上げて「目が覚めた?」と言った。

「うん」鈴木知得留は自ら彼の手を取った。

冬木空の手は本当に大きく、彼女の小さな手を完全に包み込むことができた。

「案内してあげよう」冬木空は珍しく積極的だった。

「うん」

二人は冬木邸の広大な裏庭を歩いた。多くの花や木々、盆栽、彫刻、屋外プール、室内温室、ガラス張りの茶室があり、まるで高級会員制クラブのようだった。

鈴木知得留は見て回りながら感嘆した。「家が大きすぎると思わない?」

「そう思う」冬木空は言った。「でも金が多すぎてね」

「あからさまな金持ち自慢!」鈴木知得留は吐き気を催した。

しかし、東京の三大財閥は確かに驚くべき財力を持っていた。青木氏が彼らの生死を握っているとはいえ、裕福さでは財閥の方が上だった。国家の公的資金が民間の資産に及ばないのと同じ理屈だ。

「結婚後はここには住まないよ」冬木空が突然言った。

「どうして?」

「ここに住みたいの?」

住みたくない。