鈴木知得留は階段を降りて冬木空を探しに行った。
裏庭で、北村忠は遠くから鈴木知得留が近づいてくるのを見て、つぶやいた。「お前の婚約者が来たぞ。邪魔になりそうだから、俺は行くよ」
「タンクも連れて行け」
「なんでだよ?」北村忠は逆毛が立った。
その瞬間、まるで鉄のオンドリのようだった。
「邪魔者は全部出て行けと言っただろう」冬木空は立ち上がった。
北村忠は不機嫌そうにタンクを引っ張った。
一体誰が犬を飼いたいと言ったんだ、誰が?!
頭がおかしくなったのか、犬を買うなんて買うなんて……
北村忠は怒り心頭で立ち去り、鈴木知得留の傍を通り過ぎた。
鈴木知得留は挨拶しようとしたが、北村忠がタンクを連れて、誰かに借りがあるかのような不機嫌な顔をしているのを見た。
彼女は声をかけるのを諦め、また冬木空が「お嫁さん」をいじめたのだろうと推測した。
彼女は冬木空の前で足を止めた。
冬木空は口角を上げて「目が覚めた?」と言った。
「うん」鈴木知得留は自ら彼の手を取った。
冬木空の手は本当に大きく、彼女の小さな手を完全に包み込むことができた。
「案内してあげよう」冬木空は珍しく積極的だった。
「うん」
二人は冬木邸の広大な裏庭を歩いた。多くの花や木々、盆栽、彫刻、屋外プール、室内温室、ガラス張りの茶室があり、まるで高級会員制クラブのようだった。
鈴木知得留は見て回りながら感嘆した。「家が大きすぎると思わない?」
「そう思う」冬木空は言った。「でも金が多すぎてね」
「あからさまな金持ち自慢!」鈴木知得留は吐き気を催した。
しかし、東京の三大財閥は確かに驚くべき財力を持っていた。青木氏が彼らの生死を握っているとはいえ、裕福さでは財閥の方が上だった。国家の公的資金が民間の資産に及ばないのと同じ理屈だ。
「結婚後はここには住まないよ」冬木空が突然言った。
「どうして?」
「ここに住みたいの?」
住みたくない。