第89章 冬木空、あなたの情調がまた落ちたの?

冬木空は鈴木知得留と共に玄関まで来た。

車に乗ろうとしたとき、北村忠も後について来た。「一緒に行くよ」

ここにいても存在感がないし。

冬木空は拒まなかった。

その時、鈴木知得留は突然思い出した。「道明寺華は?」

「昼寝をさせたんだ」と冬木空は言った。「そろそろ起きる時間だから、北村、呼んでくれないか」

北村忠は自分がここに現れるべきではなかったと思った。

不機嫌な顔で冬木邸のホールに戻った。

道明寺華は客室で寝ているはずだ。彼は二階に上がると、部屋から出てきた冬木心とばったり出くわした。

冬木心はすぐに背を向けた。

北村忠は思わず叫んだ。「安心しろ、お前に会いに来たんじゃない。道明寺華を探しているんだ」

冬木心の足が一瞬止まった。

「鈴木知得留のボディーガードだ。見なかったか?」