東京の広い通りは、ラッシュアワーではなかったため、とても空いていた。
冬木空は車を郊外から近い小さな洗車場に停めた。
北村忠は不思議そうに「ここで何をするんだ?」と尋ねた。
冬木空は答えず、北村忠に車から降りるよう促した。
車の外には作業着を着た二人の男が待っていた。
「冬木さん」と二人は恭しく声をかけた。
「ああ」冬木空は頷き、「衛星追跡装置を取り付けてくれ」
「はい」
冬木空は横に移動し、座って待った。
北村忠は彼の後を追って、「おい空、奥さん思いもほどほどにしろよ」
衛星追跡装置なんてそんな簡単に付けられるものじゃないだろ!
「鈴木知得留は今、安全な状況じゃない」冬木空は率直に言った。「深く関わるほど、予期せぬ事態が起こりやすい。これなら少しは安心できる」
「じゃあ俺も危険かもしれないって考えなかったのか?」北村忠は不満そうに言った。
「お前は俺の妻じゃない」
「絶交だ!」北村忠は背を向けて立ち去った。
冬木空は北村忠の後ろ姿を見て、軽く笑みを浮かべたが、すぐに表情は真剣になった。
鈴木知得留が深く関わろうとするなら、安全が最優先だ。
彼は立ち上がって追跡装置の取り付けを見守り、万全を期すため自ら動作確認までした!
……
翌日。
鈴木知得留は仕事用のスーツを着た。伝統的すぎず、かといって軽薄でもない、キャリア志向でありながらもファッショナブルな装い。
新入社員の10人は3つのグループに分けられ、同じ企画を担当する3つの部署に配属された。
部署間には競争関係があり、毎回企画が出るたびに3つの部署が同時に策定し、最良の案が選ばれる。その結果は月給や年間ボーナス、さらには2年間の昇進・降格にまで影響する。
そのため商業管理機構は内部のプレッシャーが非常に大きい職場だった。とはいえ、一般人の10倍は稼げるのだが!
鈴木知得留と田村厚は今回の組分けで別々になった。
彼らには試用期間もあった。入社したばかりで解雇されることはないものの、この2ヶ月の実習期間は直接入社後のポジションに関わってくる。役職ではなく、毎年昇進可能なポジションのことで、権限とは関係ないが給与に直結する。ポジション間の給与格差も驚くほど大きい。
そのため全員が非常に真剣に取り組んでいた。
初日は全員で商業管理機構の施設を見学した。