およそ30分後。
裁判長と裁判官が法廷に戻ってきた。
法廷は静まり返った。
裁判長が口を開いた。「被告が提出した証拠が十分であることを鑑み、本法廷は被告の無罪弁護の申請を受理することを決定した。被告は事故について陳述を行うように」
「ありがとうございます、裁判長」鈴木知得留は恭しく答えた。
そして、彼女は大きな声で言った。「被告は私が使用人の山田幸子を買収して3月29日に罠を仕掛け、流産させたと告発しています。山田幸子は法廷で、私が堕胎薬を飲ませるよう指示したと断言し、さらに私が巨額の金を渡したことを証言し、証拠も押収されました。田村厚も法廷で私が彼に未練があると述べ、そのため私が嫉妬から根岸佐伯にこのような毒手を加えたと判断されました。これについて、私には私の潔白を証明する有効な証拠があります」
「証拠を提示してください」裁判長が言った。
「まず、山田幸子が私から堕胎薬をもらったと証言していますが、追跡調査の結果、山田幸子に堕胎薬を渡したのは私ではなく、私の家政婦の田中穂でした。これを証明する証拠があります。裁判長、証拠と証人の提示をお許しください」
「許可する」
鈴木知得留は藤田文に裁判所が保管していた証拠を取り戻させ、その中からUSBメモリを取り出し、映像記録を再生しながら説明した。「これは交通部門の膨大な監視カメラ映像から見つけた記録で、3月28日午後4時に田中穂が鈴木邸を出て、近くの薬局まで歩いて行った様子です。薬局の監視カメラには、田中穂が店員に堕胎薬について相談して購入する様子が映っています。薬局の証人と容疑者の田中穂を鈴木邸から呼び出して対質させていただきたいのですが」
「許可する」裁判長は頷いた。
そこで法廷は再び休廷となり、待機することになった。
鈴木知得留は事前に手配しており、邸内で春に田中さんの動向を見張らせ、変化があれば直ちに冬木空に電話するよう指示していた。明らかにすべては掌握されていた。
30分後、田中さんは震えながら法廷に連れてこられた。
鈴木知得留は薬局の販売員に直接尋ねた。「目の前のこの方を覚えていらっしゃいますか?3月28日にあなたから薬を購入されたのですが」