第86章 冬木空という鉄のように保守的で偏執的な男

冬木家の豪邸の入り口。

鈴木知得留は、一人と一匹の犬を見つめていた。

冬木空が犬を飼うような人だとは、どうしても思えなかった。

「あなたの犬?」知得留は尋ねた。

「名前はタンク。オス、生後6ヶ月。サモエド、純血種だ」冬木空は一気に説明した。

鈴木知得留は不思議に思いながらも、その時は頷いて「ああ!」と言った。

「行こう」冬木空は前に出て彼女に手を差し出した。

その時、タンクと名付けられたサモエドが少し言うことを聞かずに冬木空を引っ張った。

冬木空は眉をひそめ、振り向いて「北村」と呼んだ。

知得留はその時になって、片隅でタバコを吸っている北村忠に気付いた。冬木空に呼ばれ、急いであと2口吸って消し、近くのゴミ箱に捨てた。「まだ半分も残ってるのに、何?」

冬木空はタンクの紐を北村に渡した。「お前が担当しろ」