第132章 生死を分ける(5)死の淵に近づく

夜が更けていく。

鈴木知得留は半眼を閉じていた。

彼女はとても疲れていた。

海水に浸かっていると、想像以上に弱っていた。

道明寺華の体に寄りかかっていた。

瞳を上げ、星のない空を淡々と見つめていた。

おそらく、夜明け前の暗闇だろう。

手を伸ばしても五指が見えない。

「眠いなら少し寝てもいいよ」と道明寺華が言った。「私が支えているから」

鈴木知得留は答えなかった。

その時、話す力さえ残っていなかった。

もう話したくもなかった。

体力を無駄にしたくなかった。

死にたくもなかった。

まだたくさんやり残したことがある、死ぬわけにはいかない。

彼女は何度も何度も自分に言い聞かせた。

空が少し明るくなってきたようだ。

鈴木知得留は半眼を開けたまま、夜明けの空を見つめ、そして真っ赤な太陽が水平線から昇るのを見た。

本当に美しかった。

目を開けていられないほど美しかった。

もう自分の体が感じられなくなっていた。

海水に浸かって、自分の体がどうなってしまったのか分からなかった。

体の感覚さえ失っていた。

彼女は思った。

もしかしたら、もしかしたら...持ちこたえられないかもしれない。

こんな一晩中、水も飲めず、食べ物もなく、ただ消耗し続けて。

彼女の目は徐々に閉じていった。

目の前には真っ赤な太陽がまだ昇り続けているようだった。

眠くなってきた。

完全に眠くなってきた。

「鈴木さん」突然、耳元で聞き覚えのある声が響いた。

鈴木知得留はもがいた。

「鈴木さん...」

冬木空だ。

冬木空、助けて。

助けて...

私を守ると約束したじゃない。

「鈴木さん...眠らないで」

いや、いや...

「眠らないで、眠らないで...」

鈴木知得留は必死にもがいていた。

冬木空が見えた。

本当に冬木空が見えた、彼は目の前に立ち、焦りの表情で彼女を呼んでいた。

でも、彼女に近づくことができなかった。

走りたかった、彼の腕の中に飛び込みたかった、彼に抱きしめてほしかった。

でも体が動かない、まったく動かない。

ただ冬木空を見つめることしかできなかった。

「いい子だから、眠らないで」冬木空はとても優しい声で言った。

これは、彼が得意としない口調だった。

「いい子だから、眠っちゃだめだよ」