夜が更けていく。
鈴木知得留は半眼を閉じていた。
彼女はとても疲れていた。
海水に浸かっていると、想像以上に弱っていた。
道明寺華の体に寄りかかっていた。
瞳を上げ、星のない空を淡々と見つめていた。
おそらく、夜明け前の暗闇だろう。
手を伸ばしても五指が見えない。
「眠いなら少し寝てもいいよ」と道明寺華が言った。「私が支えているから」
鈴木知得留は答えなかった。
その時、話す力さえ残っていなかった。
もう話したくもなかった。
体力を無駄にしたくなかった。
死にたくもなかった。
まだたくさんやり残したことがある、死ぬわけにはいかない。
彼女は何度も何度も自分に言い聞かせた。
空が少し明るくなってきたようだ。
鈴木知得留は半眼を開けたまま、夜明けの空を見つめ、そして真っ赤な太陽が水平線から昇るのを見た。
本当に美しかった。
目を開けていられないほど美しかった。
もう自分の体が感じられなくなっていた。
海水に浸かって、自分の体がどうなってしまったのか分からなかった。
体の感覚さえ失っていた。
彼女は思った。
もしかしたら、もしかしたら...持ちこたえられないかもしれない。
こんな一晩中、水も飲めず、食べ物もなく、ただ消耗し続けて。
彼女の目は徐々に閉じていった。
目の前には真っ赤な太陽がまだ昇り続けているようだった。
眠くなってきた。
完全に眠くなってきた。
「鈴木さん」突然、耳元で聞き覚えのある声が響いた。
鈴木知得留はもがいた。
「鈴木さん...」
冬木空だ。
冬木空、助けて。
助けて...
私を守ると約束したじゃない。
「鈴木さん...眠らないで」
いや、いや...
「眠らないで、眠らないで...」
鈴木知得留は必死にもがいていた。
冬木空が見えた。
本当に冬木空が見えた、彼は目の前に立ち、焦りの表情で彼女を呼んでいた。
でも、彼女に近づくことができなかった。
走りたかった、彼の腕の中に飛び込みたかった、彼に抱きしめてほしかった。
でも体が動かない、まったく動かない。
ただ冬木空を見つめることしかできなかった。
「いい子だから、眠らないで」冬木空はとても優しい声で言った。
これは、彼が得意としない口調だった。
「いい子だから、眠っちゃだめだよ」