豪華客船の上で。
鈴木知得留は船の手すりに寄りかかり、生臭い風を感じていた。
客船は海面をゆっくりと進み、海岸から離れるにつれて周りは暗くなり、見渡す限り何もない。
鈴木知得留は遠くで後を追ってくる小型スピードボートに目を向けた。
それは道明寺華だった。
楠木観月の意図的な行動を考慮して、鈴木知得留も不必要なトラブルを避けたかった。特に第一グループの前で、日本国の品位を落としたくなかった。それに父親の鈴木山の名誉も背負っているので、決して父親の顔に泥を塗るわけにはいかなかった。
道明寺華が追跡してくるのを見ていると、少し安心した。
この旅は人が多く騒がしかったが、結局は平穏だった。
しかし、彼女にはよくわかっていた。嵐の前は静かなものだと。
出発が近づくほど、安全ではなくなる。