北村忠は上野和明が消えた方向を見つめ、そして冬木空の真っ黒な顔を見返した。
これは...恋敵というわけだ。
上野和明は鈴木知得留の実の兄ではなく、二人の間には血のつながりは一切なかった。
なんとなく他人の不幸を喜ぶ気持ちがあった。
冬木空のような鼻持ちならない奴は、ちょっとした打撃を受けるべきだ!
そう思っていると。
冬木空は既に彼らを新しい隠れ場所へ移動させていた。
彼らが少し進んだところで、銃声が耳に響いた。
上野和明は敵軍を引き離すことに成功した。
鈴木知得留は驚いて、体が震え、「和明お兄さん」と呼んだ。
道明寺華もその時、心配そうな様子を見せた。
「まず隠れる場所を探そう」冬木空は鈴木知得留の手を引いた。
鈴木知得留は歯を食いしばった。
こんなに多くの人を危険な目に遭わせることになるとは、彼女は想像もしていなかった。