北村忠は上野和明が消えた方向を見つめ、そして冬木空の真っ黒な顔を見返した。
これは...恋敵というわけだ。
上野和明は鈴木知得留の実の兄ではなく、二人の間には血のつながりは一切なかった。
なんとなく他人の不幸を喜ぶ気持ちがあった。
冬木空のような鼻持ちならない奴は、ちょっとした打撃を受けるべきだ!
そう思っていると。
冬木空は既に彼らを新しい隠れ場所へ移動させていた。
彼らが少し進んだところで、銃声が耳に響いた。
上野和明は敵軍を引き離すことに成功した。
鈴木知得留は驚いて、体が震え、「和明お兄さん」と呼んだ。
道明寺華もその時、心配そうな様子を見せた。
「まず隠れる場所を探そう」冬木空は鈴木知得留の手を引いた。
鈴木知得留は歯を食いしばった。
こんなに多くの人を危険な目に遭わせることになるとは、彼女は想像もしていなかった。
空が。
徐々に暗くなってきた。
冬木空たちは洞窟の中に隠れた。
前には生い茂った木々があり、普通なら見つかりにくい場所だった。道明寺華の生まれつきの観察力で、足音は一切聞こえないことを確認し、少なくとも今は安全だった。
四人は寄り添うように座っていた。
夜は寒かった。
島の寒暖差は激しかったが、見つかる恐れがあるため火を起こすことはできなかった。
鈴木知得留の体は震えていた。
冬木空は自分の上着を鈴木知得留に着せ、さらに彼女を抱きしめて温めた。
皆が静かにしていた。
やがて、道明寺華はついに我慢できなくなり、「外を見てくる」と言った。
北村忠は彼女を引き止めた。「何を見に行くんだ?」
「師匠を」
「師匠は今、死骸組織の連中を引き離しに行ったんだろう。お前が出て行けば自分の居場所がバレるじゃないか」
「私はあなたに迷惑はかけない」道明寺華はゆっくりと言った。
「おいおい、俺はお前のことを心配してるんだぞ」北村忠は不機嫌そうに言った。まるで善意が仇で返されているようだった。
「あなたの心配なんて必要ない」
そう言って、彼女は外に出て行った。
北村忠は道明寺華の後ろ姿を見つめていた。
鈴木知得留と冬木空も同様だった。
北村忠はしばらくしてから我に返り、「くそ、あの子狼め、随分と気が強いな」
誰も北村忠に返事をしなかった。
北村忠は鼻をこすりながら、それ以上何も言わなかった。