急速に進む密林の中。
「まずは隠れろ」と上野和明は冷静に言った。
全員が隠れた場所に身を潜めた。
上野和明は言った。「相手の数が多すぎる。正体が分からない時は、勝手な行動は取るな」
「私が見てきます」と道明寺華が自ら申し出た。
上野和明は頷いた。「気を付けろよ」
道明寺華は頷いた。
そして一跳びで、非常に軽やかに近くの大木に登り、ほぼ頂上まで登って、注意深く見なければ木の葉に完全に隠れてしまうほどだった。道明寺華はそこで留まることなく、一跳びで軽々と別の木へと移動した。
北村忠は目をこすった。
「うわ、こいつ猿かよ」
いや違う、猿じゃない。
こいつは軽功を使える。
彼は道明寺華がこの木からあの木へ移動する時、あまりにも軽やかで木々さえほとんど動かないことに気付いた。
そのため、彼女の存在に気付かれることはほとんどないだろう。
驚いたのは北村忠だけではなかった。
鈴木知得留、冬木空、そして以前は道明寺華をよく知らなかった二人の部隊のエリートたちも驚愕した。
部隊のエリートたちは常に訓練を重ね、あらゆる環境での生存訓練を要求され、必ず生還しなければならないが、それでも道明寺華のような身のこなしと能力は持ち合わせていなかった。
全員が静かに待っていた。
どれくらい時間が経ったのだろうか。
道明寺華が戻ってきた。
相変わらず軽やかに木から降り、着地する時も音一つ立てなかった。
道明寺華は小声で言った。「25人、全員武器を持っています。北洋国の人間でも日本国の人間でもないようです。顔立ちが深く、浅黒い、おそらくアフリカ地域の人種で、噂のアンダーグラウンド死骸組織でしょう」
「25人というのは、上空のヘリコプターも含めてか?」
「含めていません」
「よし」上野和明は頷き、言った。「正面から戦うのは無理だ。今はまずこいつらを引き離す必要がある」
道明寺華は真剣に上野和明の指示を聞いていた。
「私が二人を連れて彼らを引き離す。道明寺と君たち二人で、他の者たちを隠れさせろ」
「危険すぎます」と道明寺華は拒否した。「3人で25人に対抗できるわけがない」
「正面から戦うつもりはない」
「それでもダメです」
「これは命令だ、相談ではない」上野和明の表情が曇り、軍人としての絶対的な威厳を帯びていた。