心臓が激しく鼓動し、まるで死のカウントダウンのようだった!
しかし、予想していた死は訪れなかった。
北村忠が目を開けると、どこからともなく現れた野犬が、その3体の死体に向かって飛びかかっていた。
死体たちは北村忠を殺す間もなく、十数匹の野犬に包囲され、激しく襲撃されていた。
武器の音が乱れ飛んでいた。
北村忠はもう走ることもできず、ただ野犬と3体の死体の死闘を見つめていた。
血の海になるのは避けられなかった。
北村忠は恐怖で固まり、ただ呆然と見つめていた。
突然、誰かに体を引っ張り上げられた。
北村忠は大きく驚き、その瞬間魂が抜けそうになった。
人に驚かされて死にそうになるじゃないか!
道明寺華は何も言わず、北村忠を引っ張って脇に避難させ、静かに目の前の死闘を見守った。
しばらくして。
3体の死体は犬の群れに噛み殺され、惨たらしい光景となった。
野犬も何匹か死んでいた。
至る所が血の海となっていた。
一匹の野犬が振り向き、北村忠の方を見た。
北村忠は凍りついた。
犬に噛み殺されたくはなかった。
彼は武器を構えた。
道明寺華は彼から武器を奪い取った。
「おい...」北村忠は怒り出した。
道明寺華は茂みの中から歩み出て、最も大きな野犬に向かって行った。
「うわ、この小娘、度胸がでかいな」北村忠は呟いた。
その野犬も道明寺華を攻撃しなかった。
道明寺華はしゃがみ込んで、その大きな野犬を撫でた。
大きな野犬は彼女をじっと見つめていた。
道明寺華は野犬の額にキスをした。
大きな野犬は振り向き、配下を連れて素早く去って行った。
北村忠は野犬が姿を消すのを見届けてから出てきて、周りの惨状を見ながら道明寺華の傍で言った。「すげぇ、あの野犬たち、めちゃくちゃ強いな」
「狼だ」道明寺華は厳しく言った。
「何?」
「あれは狼よ!」道明寺華は彼を睨みつけた。
「狼でも何でもいいけど、そんなに怒るなよ。ハスキーみたいに見えたから、ハスキーがこんなに強くなったのかと思って...」北村忠は小声で呟いた。
「ハスキーでもあなたより強いわ」道明寺華は地面から立ち上がり、帰り始めた。
北村忠は不機嫌そうに反論した。「ハスキーの知能指数を知らないだろ!」
道明寺華は話す気がなかった。